2009 年 2 月 のアーカイブ

インプラントと矯正の互恵関係(その2)

2009 年 2 月 28 日 土曜日

「山口先生、ここの小臼歯のところのアーチをもう少しふくらませて、正中線を合わせるようにしてくれない?」(仕事先の院長先生)
「はい!わかりました!」(山口)

こんな感じで、ある出張仕事先でのインプラントの患者さんの矯正治療は進みます。
40~60代が主たる年齢層である、インプラント補綴に関連した矯正患者さんでは、このように院長先生がイニシアチブをとっています。矯正歯科担当医は、自分の領域の視点から的確な意見を控え目に出し、持てる技量を粛々と発揮して進めていく、というスタンスがちょうど良いなぁ、という実感を持っています。
インプラント体の上部に、プロビジョナル(仮の歯。でも、これでも十分きれい!)がついたら、そこにふつうの歯と同じ感覚で矯正のブラケットを接着できます。そうすれば、もうそのプロビジョナルは、北極星のような…航空母艦のような…不動の固定源だ!(復習:インプラントは歯槽骨とくっついているので、矯正の力をかけても動かない。)
その不動の固定源を手中に収めれば、従来の矯正歯科では難しかった歯の移動が可能になったりします。本当にそれは、戦国時代に鉄砲が導入された位のインパクトがある、と私は言い切ってしまいたい位のモノです。

まとめ:補綴用に埋入されたインプラントは、矯正治療に超有効活用できる可能性がある。

インプラントと矯正の互恵関係(その1)

2009 年 2 月 27 日 金曜日

昨日は、歯を失った場所に入れるインプラント(人工歯根)は、歯科医学において最もホットなテーマの一つであり、ますます発展する可能性が高い、という話をしました。これから何回かは、インプラントの話題を少し深く掘り下げていきたいと思います。
なお、これから話題とするインプラントとは、歯科領域(口腔領域)における、歯を喪失した部位(←業界用語:場所のこと)に適応されるインプラントに限定します。
チタン製のインプラントを歯槽骨の中に埋め込んで行く治療行為はまさに「口腔外科」であり、歯槽骨中に立てられたインプラント体の上に、クラウン(←人工歯の部分)を装着して調整するのは「補綴」であり、歯周組織の形態を回復するという意味合いでは「ぺリオ」であり、「審美歯科」であり・・・というように、さまざまな学問領域がインプラント治療と関連していると言えます。ところで、「矯正歯科」はインプラント治療に対して、本当はすごく役立てるはずだけれども、今のところ、ちょっと控え目というか、少ししか活用されていないような感を受けます。この最大の理由は、このような患者さんが最初に矯正歯科医の門を叩く、という可能性が極めて少ないことにあると考えています。
理想的な位置にインプラントを入れるために、事前に矯正治療を行い、歯を動かしておくとより良い結果を得られるケースはかなりあるでしょう(ただし、費用と治療期間のコストは、通常より多くかかるでしょう)。インプラント治療と矯正治療の連携は、治療の質の向上と幅の拡がりに寄与するところ大であると考えられます。

人工的な骨性癒着歯(アンキローシスを起こしている歯)とは?

2009 年 2 月 26 日 木曜日

骨性癒着(アンキローシス)を起こしている歯は、矯正治療上大きな問題となりうる一方、逆説的には、願ってもいない不動の固定源(テコでも動かない、船でいえば錨(イカリ)のようなもの)として矯正治療の戦略上、非常に有効に利用できる可能性がある(でも天然歯でアンキローシスの発現頻度はとても低いし、都合よく利用できる可能性なんて机上の空論)、という話をしてきました。
そして、近年ザラに見かける人工的な骨性癒着歯とは…お判りになりましたか?

それは、インプラントです!
インプラントは、骨性癒着している(骨とくっついている)ので、歯を動かすときに不動の固定源として、とても有効活用できるのです!

インプラントは、歯科の世界では、現在おそらく最もホットなテーマの一つだと言えるでしょう。一般の方々にも、インプラントという言葉は相当に浸透していると思います。
インプラントとは、歯を失ってしまった場所に入れる(埋め込む)人工歯根のことです。その素材にはチタン(←レアメタルですね)が使われています。
従来であれば、歯を失ってしまったら、義歯(入れ歯)かブリッジを入れなければならなかった所を、インプラントで代用できる可能性があるのです。入れ歯は入れたくない、ブリッジは健康な歯を削る必要性がある、等のさまざまな問題点をカバーできる可能性があることから、将来的にもますます着目されていくに違いありません。

骨性癒着(アンキローシス)を起こしている歯は、固定源として使える

2009 年 2 月 25 日 水曜日

骨性癒着(アンキローシス)を起こしている歯は動かないことを利用して、矯正歯科治療の戦略上、固定源として活用することができます。とはいえ、そもそもアンキローシスの頻度は少ないし、都合の良い歯がアンキローシスを起こしてくれている、なんてことは確率的に、滅多に遭遇しないと思います。
でも、人工の骨性癒着(アンキローシス)を起こしている歯は、近年ザラにあります。
続きは明日に・・・

P.S.
2月25日(水)今日は新潟に出張だよ。今年は雪が全然少なかったみたいだ。
2月26日(木〉休診日
2月27日(金〉午後3時まで
2月28日(土〉通常通り診療します
3月1日(日)休診日

How do you do? —動揺しない歯ってあるの?

2009 年 2 月 24 日 火曜日

問題 以下の英文を和訳しなさい。
How do you do?

模範解答
あんたの(歯の)動揺度はどうよ?

(おしまい)

P.S.
上記の模範解答は、いいかげんです。

P.P.S.
昨日は、動揺が大きい歯は正常でなく、問題であることを指摘しました。ふつうの範囲の動揺を生理的動揺といいます。では、ピンセットなどで揺らしても全く動かない歯ってあるのでしょうか?厳密にいえば、歯槽骨のたわみなどの要素も入ってくるのでしょうから、「全く」ミクロのレベルで動かない歯なんてないのかもしれませんが、細かいことは無視してしまえば・・骨性癒着(アンキローシス)を起こしている歯、というのが一応の回答になってくるかと思います。歯根の一部が歯槽骨と癒着することにより、自然な(生理的な)歯の動揺が起こりえない状態をいいます。
骨性癒着(アンキローシス)の出現頻度はかなり低いのですが、矯正力をかけても歯が動かないことから、矯正歯科の治療上では大きな問題となってきます。

歯はわずかには動揺する。でも、動揺しすぎはNG

2009 年 2 月 23 日 月曜日

正しい知識を持っていないために、無用の心配をしてしまうということが、時としてあります。
私は小学生のころ、自分の歯をベロで内側から押すと、歯が「ピキッ」という感じに動く感触を発見し、大丈夫だろうか?抜けちゃいやしないか?とかなり心配した経験があります。それが永久歯だったか乳歯だったかなど、全然覚えていやしません。「ピキッ」は、正常よりも動揺度が大きかったんだろうなと思いますが、正常な状態の歯でも、わずかには動揺する、という知識を持っていれば、こんな心配はしなかったかもしれません。
歯根と歯槽骨の間には、歯根膜というクッションのような役割を果たすじん帯があります。だから、正常な歯でもわずかには揺れるのです。
しかし、明らかに「かなり」揺れる場合には、放置しておくと歯周組織に不可逆的なダメージを受ける可能性があります。かみ合わせに、その原因を見出すことができる場合には、矯正治療が根本的な解決手法となります。

P.S.
矯正治療中、とくにマルチブラケットを用いている場合には、正常な場合よりも歯は動くけど、それは普通のことで心配ないです。ただし、矯正治療中に特定の歯に咬合力(咬む力)が集中するような場合には、かなり動揺することもあります。このような状態が続くことはできれば避けたいのですが、ある程度やむを得ないこともあります。

40歳前後で下顎前歯を喪失する理由

2009 年 2 月 22 日 日曜日

月1回の出張仕事先(矯正歯科の診療)で遭遇したケースを紹介します。私と年齢は遠くない男性です。下顎前歯を1本喪失(抜歯された)されての矯正相談でした。今のかみ合わせでは、抜歯してある場所に補綴する(人工的に義歯を入れる)ことが難しい、ということでした。
この男性は、かみ合わせが深く、咬合力(かむ力)が相当に強いと考えられました。したがって、さらに歯の本数を減らすような方針は立てられず、下顎前歯に1本分のスペースを作り、そのスペースには十分な骨量を確保してインプラントをいれる、という前提で矯正歯科治療を始めることになりました。
この方は、どうして下顎前歯を40歳前後の若さで失ってしまったのでしょう?下顎前歯は、滅多なことではむし歯にならない歯なのです。
おそらくは、
1.歯周疾患の進行(歯周病を起こす細菌が原因)
2.かみ合わせに起因する力学的ストレス
この両者が絡み合って、歯周組織が破壊されていったものと思われます。
抜歯をされる前の状態を見ていないので、失った前歯がクロスバイトであったという確証はありません。少なくとも言えることは、小学校の頃に矯正治療を始めていれば、自分の歯を失わずに済んだ可能性が高いということです。

P.S.
今から矯正歯科治療をしておけば、今ある歯を長く持たせる可能性が高まるし、矯正をしなければ、10年、20年後には、さらに多くの歯を失う可能性が高いと思われます。

下顎前歯の1本だけクロスバイト…歯肉が退縮する(下がってくる)前に対処したい

2009 年 2 月 21 日 土曜日

今回は、「反対咬合」という意味合いのクロスバイトは除外して話を進めたいと思います。
そこで本日は、「下顎前歯の1本だけクロスバイト」です。下顎の前歯が1本だけ、上顎の前歯よりも外側(前方)にとび出ているケースです。比較的多くみられる不正咬合ですが、発見したらすぐに治療を進めたいです。かみ合わせが悪いために、このような歯に対して不自然な力が加わってしまうためです。このまま放置しておくと、この前歯だけ、歯が長く見えるようになってしまいます。「歯が長く見える」のは、歯肉(歯ぐき)が下がってしまうためです。これを歯肉退縮と呼びますが、歯肉が下がる・退縮する=その部分の歯槽骨(歯を支えている骨)も下がる、ということを意味します。
1.もともと歯肉が薄いタイプである
2.咬合力(咬む力)が強い
3.寝ているときに歯ぎしりをするなど、通常よりもはるかに強く不自然な咬合力がかかる
などの方は、輪をかけて注意すべきだと考えています。

明日に続きます…

クロスバイト(crossbite)=交叉咬合について

2009 年 2 月 20 日 金曜日

こんにちは、山口です。
今日は、クロスバイト=交叉咬合のお話です。交叉咬合とは旧式っぽい漢字の表記をしますが、母子手帳などにはそう書いてありますよね。クロスバイトとは、私なりの解釈では、「下顎の歯が、上顎の歯よりも外側にある状態」と表現するのが判りやすいのではないかと思います。正常なかみ合わせでは、奥歯から前歯まで、上顎の歯は下顎の歯よりも外側に位置しています。鏡でご自分の歯を確認してみてください。
下顎の前歯が上顎の前歯よりも外側にあれば、「前歯部クロスバイト」、「前歯部交叉咬合」と言います。この状態は、程度によっては「(前歯部)反対咬合」とも呼ばれます。(←手元にないのですが、名著・滝本シリーズの「反対咬合(医歯薬出版)」では、確か3歯以上のクロスバイトを反対咬合と定義づけていたと思います。後で確認しておきます。)
下顎の臼歯(奥歯)が上顎の臼歯(奥歯)よりも外側にあれば、「臼歯部クロスバイト」、「臼歯部交叉咬合」と言います。
また、特定の歯、たとえば左上の上顎第2小臼歯(左上5番)が内側にはえているような場合には、
口語調では・・・「左上(の)5番がクロスバイトである」
文語調では・・・「上顎左側第2小臼歯は、クロスバイト(交叉咬合)を呈する」
などといった使い方をします。

今日は、用語解説のようなお話でしたが、明日もクロスバイトの話題を続けたいと思います。

鉄は熱いうちに打て~口腔周囲筋のトレーニングは早期にはじめよう

2009 年 2 月 19 日 木曜日

2日間にわたって、上唇と下唇は軽く閉じているのが良いという話をしてきました。今日は軽くまとめておきたいと思います。
まず、日常的に鼻がつまりやすい方は、耳鼻科にご相談されることをおすすめします。やむを得ない場合を除き、鼻で呼吸する習慣をつけましょう。
唇をぽかんと開けている方は、次のような歯並び、かみ合わせの状態の場合が比較的多いです。
1.前歯の開咬(上と下の前歯のあいだのすき間が大きい。前歯で食べ物をかみ切れない。)
2.歯列弓が狭い(V字型歯列弓…上顎で典型的、狭窄歯列弓)
3.上顎前歯の唇側傾斜(前突)と下顎骨の後退・開大(時計回りの回転 clockwise rotation)
歯並びや骨格の影響により、上唇と下唇をリラックスして楽に接触させることが難しい方がいらっしゃいます。そのような方は、上唇と下唇を接触させたときに、オトガイ筋が緊張して梅干しのようなシワシワが生じます。このような方は、矯正歯科治療を受診される意義が大きいです。
口腔周囲筋のトレーニングはMFTと称されたりもしますが、矯正歯科の初期治療(Phase 1)において、非常に重要なウエイトを担っていると確信しています。

悪い習慣を断ち切るのは、早いほうがいい。良い習慣作りは、早い方がいい。良い習慣をつくれない要因があるなら、その要因は早期に除去してしまおう!